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距離と心理:なぜ往路は長く帰路は短く感じるか?

距離と心理:なぜ往路は長く帰路は短く感じるか?

突然ですが、旅行などで遠くに出掛ける時に、移動時間がとても時間がかかるように感じませんか?
特に往路は帰路よりずっと長く感じますよね。同じ距離を移動して、おそらく時間も大して変わらないと思うのですが。
往路が長く帰路が短く感じるのには、経験が関係しているのではと思うのです。
初めて行く場所だと距離感が想像でしかないのと、知らない道の進行で実際に時間がかかっているのでは?
帰路は一度経験した距離感があるのと、見慣れた場所に向かうので早く感じるのではないでしょうか?
では、実際のところどうなのでしょう。

馴染みのある場所の意識的範囲の違い

馴染みのある場所の意識的範囲の違い


心理学誌『Journal of Consumer Psychology』に掲載されたある研究では、別の場所に向かうか自宅に戻ってくるかを比較し、ヒトが判断する旅の長さの違いを調べました。
この実験の結果、被験者は自宅に戻ってくるときのほうが短いと判断したといいます。この理由として、ヒトの意識では「馴染みのある場所」のほうが意識的に広く感じるからだと考えられています。
つまり、自分にとって「(意識的に)広い」自宅から別の場所に移動するときは、時間がかかるように感じ、帰りは、家が(意識的に)広く見えるため、「家は、もうすぐそこだ」と感じるというわけです。

◆出典:lifehackerより なぜ旅の帰りは往きより短く感じるのか?に関する考察

と、ある研究結果にもあるように自宅のある地域は「馴染みのある場所」なので広範囲で場所を認識し、あとどのくらいで家に着くと予測できるからのようです。

また、往復にかかる「予測時間」の違いにより帰路の方が短く感じることがあるそうです。
これによると、


帰路に往路と別のルートを使った場合でも、時間を短く感じる効果があり、道に対する慣れとは関係ない。
慣れではなく、人は初めていく場所への往路にかかる時間を短く見積もる傾向があり、実際にかかる時間が長くなると遠く感じる。
帰路は、往路の経験から時間を過剰に見積もるので、往路よりも短い時間に感じる。

◆出典:TABI LABOより「帰り道」の方が早く感じるのはナゼか?オランダの大学による研究結果

これらのことから、人の意識の中にある「馴染みのある場所」の範囲の中では、自宅までの距離がかなりあったとしても「もうすぐ着く」と認識し、往路と帰路の「予測時間」の違いにより帰路の方が早く感じるようですね。
また、これらの意識とは別に初めていく場所への「期待」の気持ちが、往路にかかる時間を長く感じさせるのではないかと思われます。

「待ち遠しい」気持ちと「期待」がつくる仮想距離

「待ち遠しい」気持ちと「期待」がつくる仮想距離

ワクワクした期待が大きいと、楽しみまでの時間はとても待ち遠しく感じますよね。
子供の頃を想像すると「早く夏休みにならないかなー」「クリスマス早く来ないかなー」「●●に行く日はあと何日かな」と、期待をふくらませて待ち遠しくしていたと思います。
大人になっても楽しみまでの時間はやはり待ち遠しいものですよね。

旅行先での楽しみをあれこれと想像するので、早くたどり着きたい思いも大きくなります。
楽しみが待っている行き先には「期待」がふくらみ、待ち遠しさから往路がとても長く感じるのではないでしょうか?
往路にかかる時間は待ち遠しさや期待から生まれる「仮想距離」が加算されているのかもしれませんね。

山崎武也さん著者の「あなたの常識は間違っている! 原点を見失わないための43項」にこんな一文があります。


大人は待つ楽しみも知っている。待っている間に、待ち望んでいるものについて、さまざまな角度から想像を巡らせて、欲が充足されるときのことを考える。
「待ち遠しい」というのは、成熟した大人の感覚である。待つことによって、期待に胸がふくらみ心が豊かになる。

往路にかかる時間は「待ち遠しい」と「期待」に胸膨らませる時間ですし、帰路につく時間は自宅へ着く安堵の思い(こちらも「期待」でしょうか)なので、往路帰路ともに心を豊かにする時間なのかもしれませんね。

距離と心理:なぜ往路は長く帰路は短く感じるか?まとめ

往路は長く帰路は短く感じるのはなぜか?まとめ

人のさまざまな意識から往路にかかる時間は長く、帰路にかかる時間は短く感じるものなのですね。
目的地が遠ければ遠いほど距離感が掴めないですし、徒歩・車・電車・飛行機など目的地に向かう手段が違えば「予測時間」もまた変わりますが、終着点にある「期待」が良いものであることには間違えはないですよね。

時に人は往路や帰路にかかる時間を面倒に感じたり、ドラえもんの「どこでもドア」のように目的地へドアtoドアで行けたらいいのにと思ったりもします。
ですが、「待つ間が花」ということわざにもあるように、あれこれと想像を胸に躍らせ待っている間が最も良い時間であるのかもしれません。

でも、運転手さんは疲労感から帰りの方が長く感じるかもしれませんが(笑)
助手席や後のシートで幸せそうに寝ている姿を見ると、「楽しい時間を過ごせたのだな」とホッコリしますかね。
運転手さん以外の人が安心して眠れるのも、無事に帰宅できるのも安全運転の運転手さんのお陰です。